マインド・トレーニングの仕事をしていると、「人のことばっかりじゃなく、自分のことをもっと大切にしたい」という人に時々お会いします。
「私がやらなきゃ!やってあげなくては!」
という方は、世話好きだったり、サービス精神が旺盛だったり、何かと気遣いをするタイプであることが多いです。
すすんで人のために動くタイプの方々が、なぜ「人のことばかりじゃなく~」という状態になっているのか。
お話を伺ってみると、たいてい「頑張っているのに報われない」と感じておられます。
「とくに感謝されることもなく、認められることもない。だからもう人のためにあれこれ頑張りたくない。」
そんな思いが ”自分を大切にしたい” という言葉になって表れるようです。
つまり…「人のことより自分を優先したい」とかいうことではなく、「人のために何かをして、良かったと思いたい。良かったと思えるような反応を得たい。」というのが、本当の願いなんですね。
では、なぜ「やって良かった」と思えるような反応を得られないのかというと…
- 人のため、のつもりでも、実は義務感や自分のこだわりでやっている
- 自分は良かれと思ってやっているが、相手(周りの人たち)が望んでいることと食い違っている
ということが考えられます。
たとえば
部下や後輩が効率よく仕事を進められるよう、きめ細やかな指示やアドバイスをしているつもりでも、相手は「過干渉だ」と感じていたり、
自分がやった方が早くて確実だから、と全体の効率を考えて仕事を引き受けているつもりが、周りからは「他の人のやり方では嫌なんだろうな」とか「仕事を割り振るのが下手だ」などと思われていたり。
また、仕事をしながら「家事もちゃんとこなさないと」と一生懸命になっているけれど、家族は「(イライラするくらいなら)やらなければいいのに」と思っていたり。
こういった場合、人のため といいながら「自分の思うように動かしたい」「自分のやり方でやりたい」という本音が隠れていたりします。(私自身、そんな時期がありました…。)
あるいは知らず知らずのうちに「やらなければならない」と思い込んでいることもあります。
すると独りよがりの行動になってしまい、周りからとくに感謝も評価もされない、ということになりかねません。
これでは「人のためになることをしたい」という思いが報われませんよね。
そうならないために、私がマインド・トレーニングでお伝えしていることは
- 周りから求められていることは何か
- 自分はどういう意図でやるのか(本音はなにか)
を明確にしたうえで、納得して行動を決める、ということです。
納得する、ということは、自分を大切にする、ということにもつながります。
例としてマインド・トレーニングの受講生の一人、佐藤さん(仮名)の事例をご紹介します。
佐藤さんは会社で新しく立ち上げることになったEC事業のメンバーとして、とても忙しい毎日を送っていました。
スタッフの入れ替わりが激しく、誰かが去るたびに業務を引き受け、何ヶ月も残業続き。
そしてあるとき「残業時間が多すぎる」「仕事の仕方をもう少し工夫できないか」と上司から注意を受けてしまった、というのです。
「ベテランのスタッフが少ないので、私が頑張らないと、業務が滞るんです。会社のために残業してるのに!」と腑に落ちないご様子の佐藤さんでしたが、
「会社や上司の方から何を求められていると思いますか。期待されていることと、佐藤さんが頑張っておられることは合っていますか?」
と伺ったところ、一瞬ハッとした表情を浮かべ、しばらく考えた後…
「チームの中ではそこそこ長く勤めている方なので、業務の整理とか改善の提案とか、もっとリーダー的な役割を期待されているんだと思います。」
「目先の業務ばかりを頑張りすぎていたかも…沢山こなすことで、自分の価値を示したいと思っていたところもあります。」
と、”会社のためを思って頑張っていること” と “会社から期待されていること” のズレに気づき、仕事の取り組み方、頑張り方を見直すきっかけとされました。
「もうちょっと視野を広く持つようにしたいと思います。」とおっしゃったときのスッキリした表情が印象的でした。
あなたは、いかがですか?思い当たる節はおありでしょうか。
他者や組織のためにやっているのに報われない と思ったときは
- 人のため、のつもりが、実は義務感や自分のこだわりのため、になっていないか
- 相手(周り)はそれを望んでいるのか
を、ぜひ考えてみてくださいね。
「人のために何かをして、良かったと思いたい」という、あなたの本当の願いを叶えるためにも。