ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンが対決した2016年のアメリカ大統領選をきっかけに、”フェイクニュース” や ネット上の “デマ” が注目されるようになりました。
日本においても、新型コロナウイルスや国内政治関連のフェイクニュースが広まりましたね(広まっていますね)。
一度広まってしまった誤情報・偽情報を正すのはとても難しいもの。
ひとつひとつ証拠を示して反論していくのはキリがありませんし、フェイクニュースをすでに信じている人は、真偽の検証結果をなかなか受け入れてはくれません。
そこで、イギリスの研究機関 Jigsaw Research社はフェイクニュースの表現方法を動画で公開する試みを始めたそうです。(現時点では英語のみ)
動画を視聴することで、フェイクニュースを見分ける能力を高めてもらおう、というねらいです。
フェイクニュースの表現方法とは下の5つ。
- 感情的な言葉で怒りや恐怖を煽る
- 特定の人々や集団をスケープゴートにする
- 議論の論点を外れて人格攻撃をする
- 正しい vs 誤り、善 vs 悪など、両極端しか示さない
- 同一の発信者が以前の主張と矛盾したことを主張する
どれも扇情的な感じがしませんか。
このフェイクニュースの5つの表現方法を見て、私が思ったこと、それは…
「私たちの頭の中で起こる、自動思考のパターンとよーく似てる!」ということです。
自動思考とは、明確な目的がなく、無意識のうちに行っている “頭の中の独り言” のこと。
意識していても止められない、そんな自動思考も含みます。
いつのまにか自動思考をしていて、気づいたら不安や怒り、苛立ちなどのネガティブ感情が湧いていた、という経験はありませんか。
そういうときに頭の中に浮かんでいる言葉は、フェイクニュースの5つの表現方法に当てはまることが多いです。
少し例を挙げると
1. 感情的な言葉で怒りや恐怖を煽る(頭の中で)
ささいなことで「ありえない」「信じられない」と思い、カッとなる。
2. 特定の人々や集団をスケープゴートにする
たいした根拠もなく “親のせい” “パートナーのせい” “上司のせい” etc., にして、不満が止まらなくなる。
3. 論点を外れて人格攻撃をする
意見や価値観が合わない人に対して「この人おかしい」と、考え方ではなく相手そのものにレッテルを貼って嫌悪感をつのらせる。
4. 正 vs 誤、善 vs 悪など、両極端に囚われる
同意してくれる人は味方、してくれない人は敵、と決めつける。
5.以前の主張と矛盾したことを主張する(頭の中で)
「今度こそ変わろう」と決めたのに「こういう性格だから仕方がない」などと頭の中で繰り返して、絶望する。
以上、ほんの一例ですが、思い当たる節はありますか。
ふと頭の中に浮かんでくる自動思考は単なる “思いつき” にすぎません。
でも、自動思考に反応して 不安や苛立ちなどのネガティブな感情が生じると、どんどん臨場感が高まって、私たちは単なる “思いつき” を “事実” であるかのように勘違いしてしまいます。
自動思考の内容を鵜呑みにして、物ごとを別の視点で捉えることができなくなってしまうのです。
これを放っておくと、”思い込み” が激しくなって、自分を苦しめることになりかねません。
そうならないためにも、先に挙げた自動思考の5つのパターンを心に留めていただきたいのです。
パターンを知っているだけでも、違います。
ちなみに、”フェイクニュースの5つの表現方法を紹介する動画” を見た人は、見ていない人に比べて明らかに騙されづらいと判明したそうです。
フェイクニュースのパターンを知り、情報を見極めることができるようになったのでしょう。
自動思考についても同じことが言えます。
パターンを思い出すことができれば、自動思考の内容を鵜呑みにすることがなくなり、いつまでもネガティブ感情を引きずることもなくなりますよ。
5つのパターンを覚えることができなくても、せめて「自動思考はフェイクニュースと同様に感情を煽りやすい」ということを頭に留めて、鵜呑みにしないよう心がけていただければと思います。